chapter: 9 一元配置分散分析(被験者内計画)

【例題】サンプルデータ※データは架空  季節によって,学習意欲が異なるのかを調べるため,高校3年生に対して,春(4月),夏(7月),秋(10月),冬(1月)に毎回同じ人に質問紙による学習意欲調査(20点満点)を行った。季節によって学習意欲が異なるかを調べなさい。

 春,夏,秋,冬は季節という質的変数,学習意欲は量的変数となる。質的変数においては,4水準(各季節)であり,これらは同じ人の比較となる。このように異なる質的変数(3水準以上)と量的変数との関連性を調べるときには,一元配置分散分析(被験者内計画)を用いる。

データの説明

変数名 内容 尺度水準
ID ID 名義尺度
Apr 春(4月)の学習意欲得点 比率尺度(スケール)
Jul 夏(7月)の学習意欲得点 比率尺度(スケール)
Oct 秋(10月)の学習意欲得点 比率尺度(スケール)
Jan 冬(1月)の学習意欲得点 比率尺度(スケール)

9.1 分析の実施

  1. 分散分析
  2. 伝統的の反復測定分散分析

  1. 反復測定要因の中の新しい要因に分析する要因名を入力
  2. 水準に水準名を入力
  3. 3,4で入力したものが反復測定のセルに反映されるので,それぞれに対応したデータを移動する
  4. 表示の中の記述統計を☑
  5. 表示の中の効果量の推定値を☑にし,η2<>とηp2を☑

  1. ▶記述統計量プロットをクリック
  2. 横軸に(質的)変数を移動する
  3. ▶雨雲プロットをクリック
  4. 横軸に(質的)変数を移動する

9.2 出力結果(1)

記述統計量

 記述統計として,平均値,標準偏差を図か表でまとめる。

 データがどのように分布しているかを確認するために,雨雲プロットも確認する。

参加者内効果

 一元配置分散分析の結果は,F値(F),自由度2つ(df),有意確率(p),効果サイズ(η2,ηp2,ηG2)がまとめられている。

※効果サイズは,一般化η2(ηG2)を報告することが望ましい。

 一元配置分散分析の結果は,F(3, 57) = 84.276, p < .001, ηG2 = .699であり,有意であった。しかし,この結果は,具体的にどこに差があるかはわからないため,どこに差があるのかを多重比較(対比較)する必要がある。

9.3 多重比較

  1. ▶事後検定をクリック
  2. 多重比較する群(質的変数)を右側に移動する
  3. 補正の中にあるホルム(Holm)ボンフェローニ(Bonferroni)を☑にする
  4. 表示の中にあるFlag Significant Comparisonsを☑にする

9.4 出力結果(2)

事後比較

 対で比較した結果として,それぞれの多重比較の方法で有意確率(p)が算出される。

 Bonferroni法による多重比較を採用した場合,以下のように解釈される。大小関係は平均値より判断する。

  • 春と夏を比較したところ,p < .001となっており,春の方が夏よりも有意に高い
  • 春と秋を比較したところ,p < .001となっており,春の方が秋よりも有意に高い
  • 春と冬を比較したところ,p < .001となっており,春の方が冬よりも有意に高い
  • 夏と秋を比較したところ,p = .902となっており,夏と秋の間に有意な差はない
  • 夏と冬を比較したところ,p = .378となっており,夏と冬の間に有意な差はない
  • 秋と冬を比較したところ,p = .999(表記上は1.000)となっており,秋と冬の間に有意な差はない

9.5 記述例

 季節によって,学習意欲が異なるのかを調べるため,高校3年生に対して,春(4月),夏(7月),秋(10月),冬(1月)に毎回同じ人に質問紙による学習意欲調査(20点満点)を行ったデータを用いて,学習意欲得点を従属変数とする一元配置分散分析を行った。その結果,季節に有意な効果が見られた(F(3, 57) = 84.275, p < .001, ηG2 = .699)。そこで,Bonferroni法による多重比較を行ったところ,学習意欲は春(M = 17.90, SD = 1.21)は,夏(M = 13.10, SD = 1.37),秋(M = 13.60, SD = 1.27),冬(M = 13.75, SD = 1.33)よりも有意に高く(ps < .001),夏と秋(p = .902),夏と冬(p = .378),秋と冬(p = .999)の間には有意な差はなかった。