chapter: 12 2要因分散分析(被験者内計画)

【例題】サンプルデータ※データは架空  お店によって,ホットコーヒーとアイスコーヒーのどちらがおいしいかを調べるため,A社とB社のコーヒー(ホット・アイス)すべてを20名の人に飲んでもらい,おいしさの評定を行った(20点満点)。お店によって得意なコーヒーがあるのかを検討しなさい。

 A社とB社はお店という質的変数,ホットコーヒーあるいはアイスコーヒーは温度という質的変数,おいしさは量的変数となる。このように,質的変数が大きく2種類あることは2要因となり,それぞれ同じ人のデータを比較する場合,2要因分散分析(被験者内計画)を用いる。

データの説明

変数名 内容 尺度水準
ID ID 名義尺度
A_Hot A社のホットコーヒーのおいしさ 比率尺度(スケール)
A_Ice A社のアイスコーヒーのおいしさ 比率尺度(スケール)
B_Hot B社のホットコーヒーのおいしさ 比率尺度(スケール)
B_Ice B社のアイスコーヒーのおいしさ 比率尺度(スケール)

12.1 分析の実施(分散分析)

  1. 分散分析
  2. 伝統的の反復測定分散分析

  1. 一つ目の要因名を入力
  2. 3で入力した要因の水準名を入力
  3. 二つ目の要因名を入力
  4. 5で入力した要因の水準名を入力
  5. 4と6で入力した名前に対応するデータを移動する
  6. 表示の中の記述統計を☑にする
  7. 表示の中の効果量の推定値を☑にし,η2<>と偏ηp2と一般化ηp2を☑

  1. ▶記述統計量プロットをクリック
  2. 横軸に独立変数の1つ移動
  3. 分割線に独立変数のもう1つを移動
  4. 表示の中にあるエラーバーの表示を☑
  5. Y軸のラベルに従属変数名を入力
  6. ▶雨雲プロットをクリック
  7. 横軸に独立変数の1つ移動
  8. 分割線に独立変数のもう1つを移動
  9. Y軸のラベルに従属変数名を入力

  1. ▶周辺平均をクリック
  2. それぞれの独立変数を移動

12.2 出力結果(分散分析)

記述統計量

 記述統計として,平均値,標準偏差を図か表でまとめる。

 データがどのように分布しているかを確認するために,雨雲プロットも確認する。

 さらに,片方の要因をつぶした平均値も算出されている。これは主効果の大小関係を把握する際に用いることができる。

ANOVA

 分散分析の結果は,F値(F),自由度2つ(df),有意確率(p),効果サイズ(η2,ηp2,ηG2)がまとめられている。また,2要因以上の分散分析の場合,要因の数だけ主効果,要因同士の組み合わせの数だけ交互作用が算出される。具体的な出力結果は,Caseの中の単独の要因名,交互作用の結果はCaseの中の「要因名*要因名」となっている。  今回の場合,お店の行は教材の主効果,温度の行は授業形式の主効果,お店*温度の行はお店×温度の交互作用の結果となる。

 上述の結果をまとめると以下の通りである。

  • お店の主効果(1,2行目):F(1, 19) = 49.114, p < .001, ηG2 = .375
    • お店間に差があり,平均値から判断して,B社(M = 16.63)の方がA社(M = 14.50)よりも有意においしさの得点が高い
  • 温度の主効果(3,4行目):F(1, 19) = 30.653, p < .001, ηG2 = .201
    • 温度間に差があり,平均値から判断して,アイスコーヒー(M = 16.25)の方がホットコーヒー(M = 14.88)よりも有意においしさの得点高い
  • お店×温度の交互作用(5,6行目):F(1, 19) = 13.020, p = .002, ηG2 = .144
    • この結果は,具体的にどのような組み合わせに差があるかはわからないため,その組み合わせを明らかにするため,単純主効果の検定を行う必要がある

12.3 単純主効果の検定

  1. ▶単純主効果をクリック
  2. 単純効果を検討する要因に差があるかどうかを調べたい変数を1つ移動する
  3. 調整要因1にもう1つの変数を1つ移動する

12.4 出力結果

お店要因についての単純主効果(Simple Main Effects - Material)

 調整要因(⑰)毎に検討する要因(⑯)があるかの結果が出力されている。これらの結果に報告に必要なものは,F値(F),自由度2つ(df),有意確率(p)となる。自由度の2つ目は,分散分析の結果におけるResidualsとなる。

 上述の結果をまとめると以下の通りである。

  • ホットコーヒーにおけるお店の単純主効果(1行目):F(1, 19) = 43.747, p < .001
    • ホットコーヒーにおいて,A社はB社よりも有意に得点が低いことを表す(平均値から判断)
  • アイスコーヒーにおけるお店の単純主効果(2行目):F(1, 19) = 7.308, p = .014
    • アイスコーヒーにおいて,A社はB社よりも有意に得点が低いことを表す(平均値から判断)

温度要因についての単純主効果(Simple Main Effects - Lecture)

 単純主効果の検定は,もう一方の要因についても調べることができる。具体的な方法は,14と15の手順で扱う要因をそれぞれ入れ替えることによって,算出される。入れ替えた後の結果は,以下の通りとなる。

 上述の結果をまとめると以下の通りである。

  • A社における温度の単純主効果(1行目):F(1, 19) = 81.897, p < .001
    • A社において,アイスコーヒーの方がアイスコーヒーよりも有意においしさの得点が高いことを表す(平均値から判断)
  • B社における温度の単純主効果(2行目):F(1, 19) = 0.259, p = .617
    • B社において,ホットコーヒーとアイスコーヒーにおいしさの得点の有意な差はない

12.5 記述例

※通常は記述統計は表やグラフにまとめる

 お店によって得意なコーヒーがあるのかを検討しなさい。おいしさ得点を従属変数とするお店×温度の2要因被験者内計画の分散分析を行った。その結果,お店の主効果が有意となり(F(1, 19) = 49.115, p < .001, ηG2 = .375),B社(16.63点)の方がA社(14.50点)よりもおいしさ得点が高いことが明らかとなった。また,温度も主効果が有意となり(F(1, 19) = 30.653, p < .001, ηG2 = .201),アイスコーヒー(16.25点)の方がホットコーヒー(14.88点)よりもおいしさ得点が高いことが明らかとなった。
 さらに,お店×おいしさの交互作用が有意となった(F(1, 19) = 13.020, p = .002, ηG2 = .144)。そこで,単純主効果の検定を行ったところ,A社においては,アイスコーヒー(M = 15.75, SD = 0.97)の方がホットコーヒー(M = 13.25, SD = 1.29)よりも有意においしさ得点が高いことが明らかとなった(F(1, 19) = 81.897, p < .001)。一方,B社においては,ホットコーヒー(M = 16.50, SD = 1.82)とアイスコーヒー(M = 16.75, SD = 1.41)の間に有意な差は見られなかった(F(1, 19) = 0.259, p = .617)。